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武器輸出を大幅緩和 紛争助長に懸念、歯止め課題

配信
首相官邸に入る岸田文雄首相=22日、東京・永田町

首相官邸に入る岸田文雄首相=22日、東京・永田町

 政府は22日、防衛装備移転三原則と運用指針を見直し、武器を輸出するルールを大幅に緩和した。他国の技術を使って日本で製造する「ライセンス生産」の完成品をライセンス元の国に輸出できるようにするのが柱で、ロシアから侵攻を受けるウクライナを「間接支援」できる。紛争を助長するとの懸念も根強く、来年1月召集の通常国会などで議論となりそうだ。

「ライセンス」武器の輸出解禁 PAC3、米国に提供―政府、三原則・運用指針を改定

 新たなルールを受け、地対空誘導弾パトリオットを米国に送る。現在の三原則を策定した2014年以降、防衛装備の完成品を輸出したのはフィリピンに対する警戒管制レーダーの1例のみ。自衛隊法上で「人を殺傷、物を破壊する機械や器具」と定める武器の完成品を輸出する初めてのケースとなる。

 米国はウクライナに対する軍事支援を継続。自国の装備品不足を補うため、日本政府に協力を要請していた。政府は米国への弾薬輸出も検討。ウクライナに対する直接的な軍事援助に制約がある中で「側面支援」の強化を図る。

 輸出先から第三国への移転も「現に戦闘が行われている国」を除いて認める。日本側の事前同意も条件とする。紛争悪化につながらないよう、こうした「歯止め」が確実に実行できるかが課題となる。岸田文雄首相は22日、記者団に「平和国家としての歩みは堅持する。厳格な審査を確保する」と強調した。

 一方、国際共同開発品の第三国への直接輸出について、政府はこれが認められなければ、英国、イタリアと進める次期戦闘機の開発に影響が及ぶと懸念している。与党の実務者協議では、公明党が態度を突如硬化させたため結論が出なかった。政府は来年2月末までに「容認」の結論を出すよう与党に求めたが、公明はなお慎重姿勢だ。山口那津男代表は22日、首相官邸で記者団に対し、「2月うんぬんにとらわれる必要はない」と言い切った。

 与党には首相の指導力不足への不満もある。指針改定に向けた与党提言を受け取った際も「年明け早々にしっかり議論してほしい」と指示するにとどめ、明確な方向性を示さなかった。

 与党内からは政府に対し、「なぜ必要なのか説明してほしい。国民の理解を得られる努力をしてほしい」(実務者協議メンバー)との指摘が上がる。公明幹部も「国の原則に関わる話だ。実務者の議論だけでは済まない」と語り、首相が積極的に関与するよう迫った。野党は、国会の関与を経ない政策転換を追及する見通しだ。

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