石破茂自民党政調会長インタビュー
 政界インタビュー

野田首相の低姿勢は「擬装」ではないか

インタビューに答える自民党の石破茂政務調査会長=2011年9月16日、東京・永田町の衆議院第2議員会館【時事通信社】

 自民党の石破茂政調会長は2011年9月16日、時事通信のインタビューに応じ、野田佳彦首相の政権運営や自民党の対応について見解を示した。閣僚人事については「適材適所より党内融和を優先した」と批判し、安全保障・防衛問題への対応などに懸念を表明。首相の低姿勢も批判をかわすための「擬装ではないか」と指摘した。発言内容は次の通り。

 -野田内閣の顔触れをどう見るか。

 野田首相は党内融和が第一と割り切ったのだろう。適材適所より党内融和を優先した。党内ががたがたして菅政権が倒れる結果となったため、あの轍は踏まないでおこうと判断したんだろう。しかし、それより適材適所を貫くべきだった。防衛相には外交や安全保障に疎い「素人」を据え、国家公安委員長・消費者問題担当相には、マルチ商法業界をめぐる風評が取り沙汰されている人を起用した。この人たちがなぜ最適なのか、万人が不思議に思っている。適材適所より党内融和を優先した人事には強烈な違和感を持っている。

 -安全保障・防衛問題をめぐり一川保夫防衛相は自ら「素人」と発言したが、国の安全保障は懸念されないか。

 二つのことが懸念される。まず日米同盟の深化をどう進めるか。中国の台頭やロシアの不穏な行動、北朝鮮トップの代替わりなど、アジアを取り巻く安全保障環境を踏まえ、米国はアジア諸国と連携を強めようとしている。今までの経緯を何も知らない人が、どうやって国益を守り、米国、韓国、オーストラリア、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を強化していくのか、防衛のトップが素人では国益を損なうことになる。

 弾道ミサイルを撃たれた場合はどうするか。原子力発電所にテロ攻撃を受けた場合は。尖閣諸島に中国の海洋調査団が上陸したら…。突発的な事態はあり得る。そのとき、政治的に何らかの判断をせざるを得ない。野田首相は防衛問題を専門的にやったことがないし、私も野田さんとは安全保障論議をしたことはない。ならば、防衛相はなおさら素人であってはいけないし、素人であることがシビリアンコントロールの本質ではない。

 -政治主導とはいかないから、防衛官僚が振り付けるのではないか。

 官僚が振り付ければぼろを出さないで済むという問題ではない、政治家はぎりぎりの国益を懸けた判断が迫られる。選挙で選ばれた政治家と違って、官僚は決して国民に責任を持つ立場にはない。自分の判断について直接、国民に責任を負うのが文民統制の本質だ。官僚は政治判断はできない。

 -外交面で言えば、石破さんと親密な玄葉光一郎外相も外交に責任を負うのは初めてだが、心配はないか。

 防衛と違って、外交は実働部隊を動かすわけではない。玄葉氏は民主党政調会長として優れたバランス感覚と、きちんとした方向性を示していたと思う。政調会長、国家戦略担当相としてのキャリアがあり、広範な知識も持っているため、不安はないのではないか。(続く)

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