野田政権「安全運転の終わり」と「危機の始まり」
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閣議に臨む野田佳彦首相ら=2011年10月25日、東京・国会内【時事通信社】

 TPP(環太平洋経済連携協定)加盟交渉への参加をめぐる議論が白熱してきた。参加によって日本に一定のメリットがあると判断して、野田佳彦首相は参加に前向きな姿勢を示している。ただ、別の側面からみると、野田首相は政権運営上の難しい課題を抱え込んでしまったとも言える。日本にとってTPP交渉参加がいいのか悪いのかという政策的判断とは別に、党内外に反対勢力が存在する課題について、これらの勢力の抵抗を押し切って推進するという政治判断を下さなくてはならなくなったからだ。

 「どっちつかずの決着というものは、あり得ません」

 10月中旬、野田首相は親しい知人と懇談した際、TPP参加についてこう語った。発言の趣旨は、TPPには参加するかしないかのどちらかであり、中間的な結論はないというものだ。当たり前である。だが、その発言の微妙なニュアンスは、野田首相があきらかに参加へと舵を切ったことを物語っていた。実際、その数日後の17日、野田首相は内閣記者会のインタビューに応じて、「高いレベルの経済連携は日本にプラス」と述べ、TPP参加の意思を明確にした。

 TPPに参加するかしないかは、野田首相がいずれ決断しなければならない事項であったのだから、11月12日からハワイで始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前に決断するという方針はそれほど意外なことのようには見えない。だが、内閣発足以来の野田首相の政治姿勢をみると、これは野田政治の大きな転換点であることが分かる。なぜなら、これまでの野田首相の処世術は「何も決断しない」を基本としていたからだ。

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