スペイン南部ロルカ地震

イベリア半島へ

 5月12日未明。東日本大震災の被災地取材のため福島に出張に行くことになったその日に、スペイン南部で大規模な地震が起きた。建物が崩れ、死傷者が出たムルシア自治州ロルカは、かつて留学時代に1年間、暮らしたことのあるグアルダマールから、わずか100キロほどしか離れていない。

 ロルカの2度目の地震はマグニチュード(M)5.1、震源の深さは1キロと伝えられた。石造りの街を襲った激しい地震はどのようなものだったのか。スペインの友人からは、東日本大震災後に日本の状況を問い合わせるメールや気遣いのメールをもらっていた。無性に現地を訪ねてみたくなり、2カ月後にはスペインに向けて旅立っていた。(時事通信社記者・高野絵理佳)


 スペインは日本から多くの観光客が訪れているものの、直行便はない。飛行機の遅延トラブルによる経路の変更や乗り継ぎを経て、東京の自宅を出てから約30時間後、バレンシア自治州の州都バレンシアから南に約130キロにあるアリカンテ空港に到着した。さらにバスを乗り継ぎ、グアルダマールに向かった。

 懐かしい街角で、子供を1月末に産んだばかりの友人に会う。「今回はどうして来たの?」。彼女の質問に再訪の趣旨を伝えると、「実はわたしはそこの角で、友達とアイスを食べていた時に揺れに気付いたのよ」と、当時の状況を話してくれた。

 その後、彼女の自宅に行き、エレベーター会社に勤務している夫にも聞いてみたが、彼は地震に気付かなかったという。この付近では、地震の揺れを感じない人もいたようだ。

 グアルダマール近辺はイベリア半島の地中海に面したリゾート地で、夏にはスペインの首都マドリッドをはじめ、国内各地やドイツ、イギリスなどから多くの観光客がやってくる。風評による観光客の減少もあるのではないかと思っていたが、影響はないという。確かに夏の稼ぎ時というだけあって、にぎわっていた。

 それよりも、ギリシャの債務危機に端を発するユーロ圏全体の景気悪化の方が、より大きな問題になっているという。

 友人の夫はエレベーターの修理の仕事で、何度かロルカに行ったという。現地の様子を聞くと、「小さな町という印象。地震直後は募金などをしていた。今は大きな影響はないと思う」と話してくれた。

 ホテルの部屋に帰り、薬局で購入したコンタクト用目薬が入っていた袋を見ると、「TODOS CON LORCA!」(すべてはロルカとともに)と書いてあった。

 スペインの大手銀行、バンコ・サンタンデールがロルカ激励のために出した広告だった。地震のあまり起きないスペインにとって、やはり衝撃的な出来事だったと知った。長旅で疲れていたこともあり、この日は夕飯も食べず寝てしまった。

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