イスラム国 恐怖統治の実態

石油や武器密輸で資金

 内戦が続くシリアや政権の統治機能が揺らぐイラクで2014年6月末にイスラム国家樹立を宣言した過激組織「イスラム国」。奴隷制導入や処刑による「恐怖統治」で住民に問答無用の服従を強いている。米軍主導の「有志連合」の空爆作戦は長期化の様相を呈しているが、指導者バグダディ容疑者が殺害されれば、組織の弱体化につながるとの見方も浮上する。中東情勢に詳しい日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事の保坂修司氏に、イスラム国の実態や今後の展開を聞いた。(外信部・池滝和秀)

 ―イスラム国の支配地域の現状は。

 イラクやシリアでイスラム国が支配している地域は、もともと中央政府が十分な行政サービスを提供している場所ではなかった。行政の関与が微細な部分だ。そうした中にシャリア(イスラム法)に忠実な刑罰を導入したり、イスラム法廷を設置したりしてイスラム的な装いを施した程度だ。服装や風紀を取り締まる「ヒスバ」という宗教警察を導入したのが比較的目立つ。

 ―資金源は。

 外国人人質の身代金が重要な財源だといわれているが、身代金を支払ったとの証拠はない。外国人が誘拐され、仮に解放されているとすれば、巨額の身代金が支払われていることは間違いないだろう。石油や武器の密輸も重要な収入源となっている。武器はイラクやシリアで政権側から押収したものが多い。文化財の密輸もある。特にイラク北部モスルなどの大きな町では古文書が豊富に存在する。このほか、国内の通行料を徴収したり、キリスト教徒には人頭税を課したりしている。ペルシャ湾岸諸国の篤志家からの支援もあるとされている。

 ―石油密輸に少数民族クルド人が関与しているのか。

 元々、国連制裁下のイラクから石油を密輸するケースが続けられ、クルド経由でトルコに入るというルートは昔から公然と利用されている。イスラム国も、こうしたネットワークを使っている。

 ―イスラム国は資金をどう動かしているのか。

 人を通じた資金移動が大半だろう。規制がかかっているはずだが、ハワラという伝統的な送金システムも利用されているようだ。中東ではよく使われている。国際テロ組織アルカイダがかつて資金を送る際に頻繁に使っていた。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイがハワラの拠点だ。

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